おかげさまで『サクラシラーズ』をご紹介し始めて27年目を迎えました。
昨年(2025)、戦後80年という大きな節目に際し、
改めてこのラベルに宿る「原点」の物語を共有したいと考えました。
それはかつての悲しみを超え、今を生きる私たちの明日へとつなぐ、
日豪友好と平和への祝杯です。
【商品名】
ウインダウリ・エステート・サクラ・シラーズ 2023
Windowrie Estate SAKURA Shiraz
【ワイナリー】
ウインダウリ・エステート
【ヴィンテージ】
2023
【生産国・産地】
オーストラリア
ニューサウスウェールズ州・カウラ
【ワインタイプ】
赤ワイン・辛口・ミディアムフルボディ
【ブドウ品種】
シラーズ主体
【アルコール度数】
14.5%
【容量】
750㎖
【テイスティングノート】
熟したベリー。コーヒービーンズやバニラの香り。
味わいはリッチなベリー類、リコリスのニュアンス。
よく熟した豊かなタンニンが力強さを加えている。
このシラーズは現在でも最高においしいが、
今後10年間は熟成が期待できる。
【醸造資料】
このワインに使用されるブドウは収量を抑え、
またその中でも選りすぐられた一部のブドウのみ使用されています。
優しく搾られた果汁は開放槽に移され、20~25℃に醗酵温度を保ち、
日に少なくとも5回手作業で果汁をかきまわし、充分に果皮が果汁と交わるよう促します。
そして、2ボーメに達した果汁は圧搾されアメリカンオークの新樽に移され樽醗酵に移る。
「何故、桜、Sakura Shirazなのか」
このウインダウリ・エステート社の桜ラベルには
ニューサウスウェールズ州・カウラ地区の深い歴史と関わっています。
1944年、第二次世界大戦中カウラの地で捕虜になっていた日本兵約1000人余りが
大脱走を企て200名以上もの死者を出した事件がありました。
カウラの人々は事件で命を落としてしまった日本兵を手厚く葬り、
日本との友好関係を深めるために本格的な日本庭園や日本文化センターを作りました。
さらには日本人墓地から日本庭園までの5kmの間に約2000本の桜を植え、
毎年桜祭り(10月頃)が行われるようになったのです。
国際理解を象徴する並木道としての桜。
この桜をモチーフにしたのが「サクラ シラーズ」のラベルです。
「カウラの大脱走」
1944年8月5日、午前1時55分、シドニーの西約320キロに位置するカウラ戦争捕虜収容所で、
1104人の日本人捕虜が一斉に蜂起、脱走を企てるという事件がありました。
脱走当時、捕虜たちが手にしていたものは、野球のバット、そのへんで拾った木の棒、
それに食事のときに配られたフォークやナイフなど。
ほぼ丸腰に等しい、まさしく捨て身の脱走でした。
自分たちのハット(捕虜の宿舎)にみずから火を放ち、
「デテクルテキハ、ミナミナコロセ」の突撃ラッパに続いて
総決起した彼らの胸中には、生きてこの地上に残る意思など最初からなかったのです。
「生きるためではなく、死ぬための脱走。」
それこそが、カウラ事件という世界でも前例を見ない
捕虜脱走事件の底に流れるテーマだったのかも知れません。
カウラ事件を考えるとき、一種の呪文のように繰り返される言葉に
「生きて虜囚の辱めを受けず」というものがあります。
これは、A級戦犯として戦後絞首刑にされた陸軍大将・東条英機が唱えた
「戦陣訓」の一説で、その意味するところは、捕虜になることはこの上もない恥辱だから、
敵につかまるぐらいなら自決しろという、大変厳しいものです。
戦後世代には到底理解できないムチャクチャな教えですが、
戦時教育を受けた日本軍人にとって、この言葉の持つ神通力と拘束力は、
ほとんどカルト宗教と言っても良いほど強固なものだったようです。
カウラ収容所の日本人捕虜たちは、三度三度の美味しい食事を与えられ、
強制労働が課せられることもなく、それどころか学芸会や相撲大会、
野球の試合などリクレーションの時間さえふんだんに与えられていました。
病気になれば即刻治療してもらえるという待遇を与えられていながら、
捕虜という身分から脱走したい一心から、彼らは大脱走を実行したのです。
暴動の結果は、日本側の死者231人、負傷者108人、成功者ゼロ。オーストラリア側の死者4人。
史上最大の捕虜脱走事件は、オーストラリアと日本の両国政府によって長く隠蔽され続け、
事件が公式に語られるようになったのは、事件から40年も経った1984年のことでした。
そしてこの事件の裏側には、日本人のメンタリティーを考える上で
最も本質的な何かが潜んでいるように思えてならないのです。
上記の記事内容一切は、
カウラ事件に造詣の深い作家・山田真美氏の了承を得た上で、氏のウェブサイト
「山田真美の世界『週刊マミ自身』第142号」より引用させていただいております。
山田真美氏略歴
カウラ事件を扱った金字塔的ノンフィクション
“Voyage from Shame”(ハリー・ゴードン著)を『生きて虜囚の辱めを受けず』のタイトルで
邦訳出版したほか、カウラの日本人将校にスポットを当てた
『ロスト・オフィサー』の原作者でもあり、
NHKハイビジョン特集「カウラの大脱走」(2005年放送)の制作にも携わった。
山田真美氏の作品等は公式サイトからご確認ください。
公式サイト:
https://yamadamami.com/
《漫画ソムリエールやメディアでも注目》
漫画「ソムリエール」(le vin #33・「それぞれの桜」) にて掲載。
カウラの大脱走事件をテーマにしたドラマを、
日本テレビ開局55年記念スペシャルドラマ
「あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった」として放映。
【生産者】
Windowrie Estate(ウインダウリエステート)
シドニーより車で西へ5時間ほどの所に位置するカウラ地区にある
ウインダウリーエステートはカウラ地区初のブティック・ワイナリーです。
ワイナリーは1861年に建てられた
歴史的建築物である製粉所(ミル)を改築しセラー、
テイスティングルームとして使用されています。
ワインメーカーでオーナーのデイビッド・オデア氏は1959年に
ウインダウリーの土地を購入、
1961年にホークスブリー大学農学部を卒業し、
ハンター・ヴァレー近くの農場育ちのウィズと1964年に結婚後、
2人3脚で穀物類を育て農場を切り開いてきました。
1980年代に入り、ブドウ栽培へと移行したことは
オデア・ファミリーにとって大きな決断でした。
始めは上手くいかないことも多々あり、
試行錯誤の繰り返しでしたが、
今ではこの地域・カウラ地区初のワイナリーとして大成功をおさめ、
家族全員がワイナリーの運営に携わり成長しつづけており現在、
4人の兄妹がワイナリーの軸となっています。
ウインダウリーはオレンジ地区からみると300mほど海抜は下がり
やや温暖な気候になり、このあたりは非常にのどかで四季があり、
野鳥も多く、ウインダウリの畑にはカンガルーや野うさぎが走り回っています。